健康診断で異常を指摘されたら
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いびきと睡眠時無呼吸症候群の関係性

いびきは単なるうるさい音じゃない? 放置すると怖い「睡眠時無呼吸症候群」とは

「いびき」と聞くと、就寝中のうるさい音だけが問題と思われがちです。しかし、このいびきが、実は命に関わる深刻な健康問題と深く関係していることをご存知でしょうか?

いびきと睡眠時無呼吸症候群(SAS)の深い関係

いびきというと、「ぐっすり寝ている証拠」と思っている方も多いかもしれません。
しかし実は、いびきは体からの“異常のサイン”である場合があります。

いびきは、空気を吸い込むときに、狭くなったのどが振動して鳴る音です。特に睡眠中は、のどの筋肉が緩みやすくなります。そのため、空気の通り道(気道)がさらに狭くなり、いびきが出やすくなります。

空気の通り道が狭くなると、呼吸1回あたりで取り込める酸素の量が減ってしまいます。つまり、体が酸素不足(=酸欠)になってしまうのです。
寝ている間は、起きているときほど酸素を使わないため、自分では苦しく感じにくいのですが、体の中では酸素が足りない状態が続いています。

症状が重くなると、睡眠中に何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなる(低呼吸)状態が繰り返されるようになります。その結果、睡眠時間(約8時間)のうち長い時間を酸素不足のままで過ごしているケースもあります。
このような状態は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と呼ばれる病気で、自覚のないまま進行している方も少なくありません。

特に注意が必要なのは、いびきが途切れた後に一時的な静けさがあり、その後「ガッ」と大きな呼吸音とともに再開するようなパターンです。これは「無呼吸」のあとに呼吸が再開するという典型的な睡眠時無呼吸症候群のサインです。
また、「いびきが朝まで続く」「仰向け以外の姿勢で寝るといびきが小さくなる」といった特徴も、睡眠時無呼吸症候群の方によく見られます。

いびきによる夜間の酸素不足は、眠りの質を悪くするだけでは済みません。睡眠中に呼吸が止まる状態が毎晩何年も続くことで、体は慢性的な酸素不足に陥ります。
この状態が続くと、将来的に以下のような生活習慣病や血管・心臓系の重篤な病気を発症しやすくなります。

  • 高血圧(特にSASとの関連が深いとされています)
  • 心不全、不整脈
  • 心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患
  • 脳梗塞(脳卒中の一種)などの脳血管疾患

これらの合併症は、放置すると命に関わる場合もあるため、早期の対策が非常に重要です。

CPAP(シーパップ)療法で健康な未来を

CPAPは、鼻にマスクを装着しCPAP機器から空気を送り込みます。これによって、寝ている間に気道が塞がって無呼吸の状態になることを防ぎ、呼吸を安定させることができます。

CPAP療法は、主に以下のようなメリットがあります。

  • 睡眠中の呼吸の停止を防ぎ、体内の酸素レベルを適切に維持できます。
  • 睡眠の質が向上し、熟睡できるようになることで、日中の眠気や倦怠感、集中力低下といった症状が改善されます。
  • 高血圧、心臓病、脳卒中といった生活習慣病や重篤な合併症の発症リスクを低減し、将来の健康を守ります。

この治療は毎晩継続して使う必要がありますが、無呼吸の回数を大きく減らし、高血圧や心疾患などの合併症リスクの軽減にもつながることが報告されています。再現性と安全性に優れていることから、多くの患者さんに選ばれています。
単に現在のいびきや無呼吸を改善するだけでなく、10年先を見据えた長期的な健康維持に繋がります。

当院が大切にしていること

当院では、「一時的ないびきの軽減」よりも、根本的な健康リスクへの対処を重要視しています。いびきの原因は、肥満、扁桃腺の肥大、顎の骨格など多岐にわたるため、患者様一人ひとりの状態を正確に診断し、睡眠時無呼吸症候群の状態(重症度)によって、最適な治療法をご提案することを目指しています。
必要に応じてCPAP療法などの医療機器を用いた治療、または外科的治療が必要な場合には専門機関へのご紹介を含め、総合的なアプローチで患者様の健康をサポートします。

適切な診断と治療を受けることで、現在のつらい症状を改善し、将来の健康リスクを大きく減らすことができます。いびきや日中の強い眠気など、睡眠時無呼吸症候群のサインに気づいたら、決して一人で悩まず、お気軽に当院へご相談ください。

文責 医療法人ヘルシア 長良内科クリニック 院長 原瀬 一郎