- 肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝
- 脂肪肝の原因
- 脂肪肝の症状はほとんどない?
- 脂肪肝が進行するとどうなる?
- 脂肪肝の治療・改善方法
- 肝臓の炎症が長期間続く慢性肝炎
- 慢性肝炎の原因
- 慢性肝炎の自覚症状はない!?
- 慢性肝炎の治療
肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝
脂肪肝は、不要な脂質や糖質が中性脂肪として肝臓に溜まり、肝臓の3割以上が脂肪に占拠された状態です。
脂肪肝の原因は運動不足や食べ過ぎなどが多く、日本では4割程度の男性が患っていると報告されています。
BMIが25を超える方は皮下組織以外にも肝臓にも脂肪が溜まっている状態として推測できますが、日本人では一見肥満体型ではない痩せた方でも脂肪肝を患う方が多いです。
脂肪肝の方は内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)も発症している方が多く、放っておくと肝硬変や肝炎、肝臓の機能低下など重い状態になってしまいます。
また、糖尿病や高中性脂肪(脂質異常)など生活習慣病を引き起こし、動脈硬化を悪化させる危険性が高まります。
脂肪肝の原因
肥満が最も多い原因です。炭水化物(糖質)を必要以上に摂取し過ぎると肝臓で中性脂肪に変えられ、肝臓に溜められて脂肪肝を発症します。
また、糖質を摂取し過ぎれば糖尿病を発症しやすくなり、糖尿病も脂肪肝と深い関わりがあります。脂肪肝になるとインスリンというホルモンの効果が弱まります。
インスリンは血糖値を降下させるのに大事な役割を果たしており、効果が弱まると糖尿病を発症します。そのため糖尿病の発症を予防すれば、脂肪肝の発症予防にも繋がります。
また、お酒も脂肪肝の原因になり得ます。お酒を代謝する時に中性脂肪が産生されて肝臓に溜まることで脂肪肝を発症します。
脂肪肝の症状はほとんどない?
脂肪肝になってもほとんど症状が現れません。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほどですが、脂肪肝と診断された時点で、脂肪が蓄積して肝臓の機能が低下していることを意味しています。悪化する前に対応するようにしましょう。
脂肪肝が進行するとどうなる?
脂肪肝が脂肪性肝炎となり、肝硬変、肝がんへと病状が悪化していく場合があります。
アルコール性脂肪肝の方はASH(アッシュ)になる場合もある
お酒によってアルコール性脂肪肝を発症している方の中には、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)へと悪化する場合があります。
お酒によって肝臓に炎症が起きた疾患がアルコール性肝炎であり、肝細胞が急に激しく破壊されて壊死したり、線維化して肝臓が適切に機能しなくなったりします。
アルコール性肝炎は肝硬変の前段階であり、放置してお酒を飲み続けると肝硬変もしくは肝がんに進行するリスクもあります。
非アルコール性脂肪肝の方はNASH(ナッシュ)を発症する場合もある
肥満の方が増えるにしたがって非アルコール性脂肪肝を発症する方が増加しています。
これまでは非アルコール性脂肪肝は悪化しないと考えられていましたが、お酒を飲まない方でも肝炎を発症して肝硬変、肝がんへと悪化していく場合があることが判明したため、肥満によって発症する脂肪肝もASHと同じような状態に悪化することが分かりました。
この状態を非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼び、現在100万人もの日本人がNASHを発症していると考えられており、飽食の時代の肝臓病として問題となっています。
脂肪肝の治療・改善方法
脂肪肝の治療は主に、肝障害を防ぐこと、そして脂肪肝に関わるメタボリックシンドロームの改善です。運動療法や食事療法によって生活習慣を見直し、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満を改善させ、脂肪肝を治療していきます。
食事療法
飽和脂肪酸を摂らないようにしましょう。果糖や糖類を避けて炭水化物は雑穀から摂取するのがお勧めです。
お勧めは脂質が少ない食事ですが、摂取カロリーを抑えれば同じような効果を認めます。
減量と運動
体重が減少すれば脂肪肝が良くなりますが、7%以上の体重を減らさなければ肝臓の脂肪化は改善できないと考えられています。例えば、体重が70kgの方は5kg程度の減量が必要であり、実際に行うのは困難です。
運動でも肝臓の脂肪化や肝機能障害を改善できます。肥満により脂肪肝が発症した方は、1回30~60分程度の有酸素運動を週に3~4回、4~12週間続けると、減量できなかったとしても肝臓の脂肪化は改善すると分かっています。
また、筋トレなどのレジスタンス運動は有酸素運動に比べてエネルギー消費量は少ないですが、同様に肝臓の脂肪化を改善できます。運動することで生活習慣病の発症や進行を防げるため進んで行いましょう。
薬物療法
脂肪肝を改善させる有効なお薬は、GLP1作動薬、SGLT2阻害薬、ピオグリタゾンなどの糖尿病に対して用いられるお薬で、肝組織の線維化を改善させることが分かっています。
また、高血圧の方は肝機能を改善するのにARBやACE阻害薬などが、効果が認められています。脂質異常症の方に対しては、フィブラート製剤や悪玉コレステロールを改善させるスタチン製剤などが脂肪肝を改善すると期待されています。
また、ビタミンE製剤も脂肪肝を改善することが分かっています。このように数多くのお薬がありますが、脂肪肝そのものを治療するのに保険を使えるお薬は現時点ではありません。
肝臓の炎症が長期間続く慢性肝炎
慢性肝炎とは、肝細胞(肝臓の細胞)に長い間炎症が起き続けることで肝細胞が破壊される疾患です。
そして少しずつ肝臓が線維化していって硬化して肝硬変を発症し、肝がんにまで進行することもあります。
国内の慢性肝炎の9割は、B型もしくはC型肝炎ウイルス感染によって発症します。
慢性肝炎に特徴的な症状はないため、血液検査で異常を指摘されて見つかることが多いです。
慢性肝炎を指摘された場合、血液検査でより詳しく調べて原因を特定し、病状に合わせて治療を行わなければいけません。
慢性肝炎の原因
ウイルス性疾患による慢性肝炎
慢性肝炎の原因の大半は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどによるウイルス性疾患です。
C型感染は、刺青や滅菌が不十分な鍼治療、輸血など、血液を通じて感染します。
最も多い感染理由は輸血ですが、今ではスクリーニング体制が厳密となっているため国内で感染する危険性は非常に低くなっています。
薬剤C型肝炎問題で広く知れ渡ったフィブリノゲン製剤などの血液製剤に関しても、今では適切に加熱処理されており感染する危険性は低いと言われています。
一方でB型肝炎ウイルスは、血液を通じての感染以外にも性行為でも感染します。また、母子感染する可能性が高いと報告されています。
生活習慣による慢性肝炎
脂肪肝やお酒によっても慢性肝炎が引き起こされます。
近年問題となっているメタボリックシンドロームの大半の方が、肝臓に中性脂肪が溜まった脂肪肝を発症していると考えられています。
これまでは脂肪肝になっても慢性肝炎や肝硬変、肝臓がんには進行しないと考えられていましたが、近年になって脂肪肝を起点として肝硬変や肝臓がんを発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)という疾患の概念が判明してきています。
そのため、脂肪肝による慢性肝炎を軽視しないようにしましょう。
慢性肝炎の自覚症状はない!?
発症しても初めの頃は目立った症状はほとんどありません。
そのため、肝硬変を発症して初めて慢性肝炎に気づく方も珍しくありません。
主な症状には、お腹の上部の気持ち悪さ、微熱、疲労感、食欲低下、体調不良、全身倦怠感などがありますが、急性肝炎の方によく見られる黄疸は初期段階ではほとんど認められません。
慢性肝炎の治療
A型肝炎ウイルス(HAV)
食欲低下などの症状がある方に対しては薬物療法を行うこともありますが、長期間症状が続くことはなく、自然と治っていきます。
B型肝炎ウイルス(HBV)
お薬を使ってウイルスの活動を抑制します。現時点ではウイルスをすべて除去することは期待できないため、肝臓へのダメージを最小限に抑え、肝硬変や肝がんなど重篤な状態へ移行しないように治療を行うことが大切です。
C型肝炎ウイルス(HCV)
近年C型肝炎ウイルスに対する治療薬は急激に発展してきており、お薬によってC型肝炎ウイルスを完全に除去することが治療目標になっています。